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2013.12.10

vol.43 クリスマスのポマンダー作り

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先人の知恵、ポマンダーを、
ライムやクリスマス・グリーン、木の実と合わせてTin 製ケーキスタンドにデコレーション。



師走に入り、慌ただしい日々ですが、

そんな中でも、ふとした瞬間に
クリスマス・グリーンやクリスマス・スパイスの香りに触れると、
この季節ならではの、特別な気持ちにさせられます。

例年は、主宰するお花の会、アロマクラスの参加者さんと
クリスマス・リースやクリスマス・スワッグ作りを楽しむのですが、

今年はちょっと趣向を変えて、
「ポマンダー作り」を試みました。


皆さんがポマンダーを作成し始めるやいなや、
家中がオレンジとクローブの豊潤な香りに包まれ、

針葉樹の香りとはまたひと味違った明るい気持ちにさせられます。


一年で一番太陽の出番が乏しくなるこの季節、
オレンジの明るみを帯びた芳香は、

図らずも、まるで長い冬に希望を与えてくれるかのような
偶然的な効果があるようにも思えました。





アロマの世界に携わり
香りの歴史を辿るようになってから、

人とハーブ、スパイスの関わり合い、暮らしへの取り入れ方を
ただ書物で読み想像するだけでなく、
実際に再現してみることがとても興味深く、また大事なことだと感じています。


昔の人々が、どのような思いで
ポマンダーというものを思いつき、
どんな意味合いや効能をもって材料を決めていったのかーーー。


それを皆さんと体験することで、
初めて実感として、先人の知恵の素晴らしさを知り、
また、昔から面々と連なる
人と植物との、暮らしの中での密接な溶け込み合いというものを
感じ入ることができるのではないかと思うのです。


さて今回は、
そのポマンダーの作り方を、ご紹介したいと思います。


素材はオレンジの他、ライムやレモンなどの柑橘類にクローブをさしたものが代表的ですが、
個人的には、やはりオレンジが一番作りやすく、香りも良いと感じます。


短い期間に楽しむショートターム(Short term)・バージョンと、
保存版バージョンの二通りの作り方がありますので、

TPOに合わせ、
どうぞ皆様のご家庭やパーティー、ギフト用に応用して頂けたらと思います。


オレンジとクローブ、スパイスの香りが、
皆様のクリスマスの
温かな香りの記憶に繋がっていきますように。



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【 ショートターム(Short term)・バージョンのポマンダーの作り方 】


● 材料 .......................................................................................

   ・オレンジ(ネーブルオレンジ、カラカラオレンジ、マンダリンなど)
  (なるべく丸く、オレンジの色味がきれいな物。ツリーに下げる場合は、小ぶりの物。)

   ・クローブ(トップの丸いつぼみ部分が付いているもの)

  
   ・彫刻刀    ・爪楊枝か竹串、オリーブピックなど
   ・リボン    ・ハサミ    ・マスキングテープ


● 作り方 ..........................................................................................


  1)デザインを決める。

    リボンを付ける場合は、付けたい部分にマスキングテープを十字に貼る。
    そのリボン装飾予定部分を除いて、クローブをさしていくことになる。
    (後でそのマスキングテープをはがし、リボンを付ける)

    エンボスの模様を付けたい場合は、
    彫刻刀で果肉までいかないよう気を付けながら削り掘っていく。


  2)つぼみの付いたクローブをさし込んでいく。(中には取れているものもある為)

    オレンジの皮にさしたり、削り掘った白い部分にさしたり、
    模様も規則的に一列にしたり、スパイラル(螺旋状)にしたり、自由なデザインで。

    オレンジの皮が厚く固い場合は、爪楊枝や竹串、もしくはオリーブピックなどで
    事前に穴を開けるとさしやすくなる。

    また、強くさし込むことによって裏面(底面)のクローブのつぼみが壊れることが
    あるので、オレンジを手に持つか、テーブルに置いて作業をする場合は
    注意してさし込む。
    
    クローブを深くさし込むことによって、果汁がクローブに染み込み、
    香りも拡散されると同時にオレンジが乾燥しやすくなるそうなので、
    クローブの軸いっぱいにさし込むことがポイント


  3)こちらのバージョンは、環境にもよるが、3、4日すると乾燥して縮んだり
    色味にも変化が生じてくるので、来客やパーティーに飾る場合には、
    できるだけぎりぎりに作って新鮮なところをデコレーションするとよい。

   (一定の方向に置いたままにしておくと、底部分がかびることがあるので注意する)


   ☞ 短期間のデコレーションと割り切って飾る場合/その後のオレンジの活用法。

       2、3日したら中身を頂き、
       外側の皮はピールしてお茶やお風呂、オレンジピールのお菓子、スパイス・ワインなどに
       利用することができる。

       ピールを乾燥させれば、保存用のお茶やお風呂用の素材となり、
       その他、 ハンガリアン・ウォーターの材料に利用したり、

       ポマンダーで使用して余ったクローブと一緒に小さなムスリン袋に詰めて、
       ドライミントやローズマリー、ラヴェンダーなどと一緒に防虫サシェやポプリにすることもできる。

    

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(左)まっすぐにさしたい場合、輪ゴムや紐をオレンジに十字にして、そのすぐ横にクローブをさしていくとよい。
(右)色々なデザインを楽しんで。エンボスをする際には、皮が厚めの掘りやすい種類のオレンジを使うと容易。

   
 
 
【 保存版バージョンのポマンダーの作り方 】


● 材料 ................................................................................................


   上記の「ショートターム・バージョン」と同じ。

   その他ーーー

    ・パウダー(シナモン、オールスパイス、オリスルートなど)
    
     ☞ シナモン、オールスパイスパウダーは抗菌、オリスルートは保留材の効能がある。
 

● 作り方 .......................................................................................


  1)保存版のポマンダーは、全面にクローブをさしていく。
   (リボン仕上げにしたい場合は、「ショートターム・バージョン」と同様に
    先にマスキングテープを貼っておく。)

    乾燥するとオレンジ自体が少し縮むので、きつきつにささずに、
    クローブ間に少しゆとりをもってさして行く。

    その後、果汁がにじみ出ている状態のうちに、パウダーを茶こしで
    全面にふりかけていく。 

    (果汁が乾いた後だと、パウダーがまぶしにくくなる為)
    パウダーをまぶすことで、香りと共に、カビ防止にもなる。


  2)風通しのいい場所で、ざるなどにあげて乾かすか(時々ひっくり返す)、
    粉が落ちてきてもいいように紙袋に入れて口をしめ、つり下げるなりして、
    乾燥させる。
    環境にもよるが、約2週間〜1か月ほどで出来上がる。

    完全にドライになったら、リボンをかけたり、トップにドライの木の実やお花、
    シナモンなど飾って、ツリーのオーナメントなどにして楽しむことができる。

    また、防虫効果を期待して、クローゼットに下げておくことも可能。


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(左)クローブを全面に付けた状態。テープ部分は、リボンを装飾予定。 (中)パウダーを散らす。
(右)まぶし終わった状態。この後、数週間、乾燥させる。


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ポマンダーとは

  柑橘系の果物に、香辛料をまぶしたもの。

  時代を経て、陶器や金銀銅製の容器にハーブを入れる形態となり、
  その装飾品をポマンダーと呼ぶこともあるそうです。


  下水処理の整っていなかった中世に、悪臭を避ける目的の他、
  ヨーロッパで流行したペストの疫病防止や魔除け、お守りのために
  人々はハーブのミニ・ブーケ、タッシーマッシーや、このポマンダーを持ち歩いたり
  身につけたりしていたそうです。

  疫病患者と接することの多い、当時のお医者さんは、
  ポマンダーを首から下げたり、手に長い棒を持って、その先端にポマンダーを
  詰めていたという説も。
  当時の絵などを見ると、ハーブがどれだけ切実に病気感染を避けるために
  使用されていたのかを垣間見ることができ、非常に興味深いものがあります。


  現代では、ポマンダーをクリスマスや新年のギフトにし、
  クリスマスのデコレーションにしたり、室内香にもして楽しみます。

  保存版バージョンのポマンダーは、上記の「作り方」最後に記載した通り、
  クローゼットに入れて虫除けとして利用することもできます。


クローブのこと

  丁字(ちょうじ)という別名から想像できるように、
  「丁」は「釘」と同義。褐色のクローブは、まるで錆びた釘のよう。
  
  熱帯原産の常緑樹であるクローブのつぼみはピンク色で、乾燥させると
  赤みを帯びた褐色になります。

  市場に出回っているスパイス、クローブは、開花前のつぼみを収穫し、
  花柄をのぞいて日干しにしたもの。

  ポマンダーに使用する際の効能としては、抗菌、殺菌、抗真菌、駆虫作用など。



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手作りのポマンダーは、幸福を呼ぶという言い伝えもあるのだとか。


皆様の新年が、
どうぞしあわせに満ちたものとなりますように。

 
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本年も、「スローライフ イン バークレー」をご愛読下さいまして、
誠に有り難うございました。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。