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2013.08.01

vol.40 フレッシュ・ビーンズで簡単手料理

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フレッシュで頂くお豆と言ったら、
さやいんげんや枝豆、そら豆、グリーンピースくらいしか知らなかった私ですが、

バークレーに越して来てからは、
こちらのファーマーズ・マーケットで見かける変わった品種のお豆や、
食べることにこだわりのある人々が周りにたくさんいる影響で、
随分と新しい食の世界が開けたように思います。


なんと言っても、
バークレーのランドマーク的存在であるシェ・パニースレストランのオーナーの
アリス・ウォータースさんの提唱する、

「旬のものを食べる」
「ファーマーズ・マーケットで食材を調達する」

(ここには、コミュニティの形成、農家との密接な関わりを持つことの大切さや、
それ以外にも、新鮮な食材をその場で見て購入することによって、
素材そのもののもつ滋味を知って楽しむこと、そして料理のインスピレーションにしていく
という意味合いも含まれるのではないかと思います)

   Vol.2「バークレー・ファーマーズ・マーケット」
   ☞ Vol.29 「エディブル・スクールヤード」

という考え方は、そのままバークレーに住む人々にも十分に浸透しており、
少しお値段は張っても食を大事にする人たち、
食のみならず持続可能な社会をも考慮してこだわりを持つ人たちは
ファーマーズ・マーケットに出かける意義を認識しながら
食材を調達し、料理をし、暮らしを楽しんでいるように思います。



「旬」というのは、
自然の摂理の中で、その素材が自身のエネルギーを最も形に現した時のことーーー。
恵み以外の何ものでもないですね。


また、その季節にしか手に入らない素材を食し、生活するということは、
暮らしの情景にもなっていくことだと思っています。


小難しいお話はさておき、
結局、美味しいものを頂く、ということは、
近場にある、新鮮なものをシンプルに頂くに限るーーー
ということに結論づけられるのかもしれません。

* * *  * *


さて、
皆さんは、シェリング・ビーンズと呼ばれる、
いわゆる「さや」を取って食べるタイプのお豆を、生で調理したことはありますか?

ブラックビーンズ(黒豆)、小豆、ひよこ豆、ピントビーンズ(うずら豆)などなど
乾燥した物は普通にお店で見かけ、
お料理に使用されることも多いのではないかと思います。


バークレーのファーマーズ・マーケットに出店して
いる、" La Tercera" というファーマーのお店で
8月から9月にかけて並び始めるのが、この
シェリング・ビーンズの「フレッシュもの」です。

一年の間、この短い期間しか姿を現さない
フレッシュ・ビーンズですが、初めて見た時には、
一体どのようにして料理をするのだろう?
と興味をそそられました。



写真右 /ファーマーズマーケットで接客する
"La Tercera"ファームのAnnabelle さん。


 

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生き生きとした、いんげん豆たち。写真右下一部も同様。


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写真左 / 左一番下のピンクが混じった豆が、クランベリー・ビーンズ。右隣の白い豆が、カネリーニ・ビーンズ。

その右後ろにあるのは、ココ・ビアンコ・ビーンズ。

 
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うっすら緑色がにじんだ白いさやのカネリーニ・ビーンズ(白いんげん豆)、
そしてなんと言っても、クリーム色の下地にピンク色の模様が入って、
ひと際目を引くクランベリー・ビーンズなどは、
思わず手に取って眺めてみたくなるような美しさに溢れています。



今回は、娘のお友達のお母さんでもあり、元シェ・パニースレストランのシェフでもあった
ケルシーから夫が教わり、私に伝授されたフレッシュ・ビーンズの一皿をご紹介しましょう。


私の主宰するお花の会やアロマクラスで
生徒さんにお出しする度に、皆さんからレシピをリクエストされる人気ディッシュで、
お肉も使っていないのに
ハーブのお陰でしょうか、コクがあって満足感のある一皿に仕上がります。

なんと言っても、乾燥豆のように一晩水に漬けたりする手間がなく、
20~30 分で仕上がる手軽さが魅力。
又、豆の煮具合にばらつきがないのも嬉しい点です。


ココ・ビアンコ・ビーンズカネリーニ・ビーンズクランベリー・ビーンズ等の
お豆で作ることができますが、
残念ながら、クランベリー・ビーンズを煮込むと、
あの美しいピンク色は消えてしまいます。
お色は、作る前までのお楽しみということで、ご満喫下さい。

きれいな色で仕上げたいのであれば、
ココ・ビアンコ・ビーンズが一番お勧めです。


又、今回はフレッシュもののお豆で作るレシピとなりますが、
もちろん乾燥豆で長く煮込んで作ることもできます。

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* * *  * *
 


【 材料 】

 ・フレッシュシェリング・ビーンズ ・・・ 1と1/2 カップ
     Coco Bianco beans(ココ・ビアンコ・ビーンズ)、
     Cannellini beans(カネリーニ・ビーンズ )、
     Cranberry beans(クランベリー・ビーンズ)
      → Borlotti beans(ボーロッティ・ビーンズ)とも言う。

 ・玉ねぎ(さいの目切り) ・・・1/4 カップ

 ・にんじん(さいの目切り) ・・・1/4 カップ

 ・ハーブ(ベイリーフ1枚、セージ小1枝、パセリ少々)
   その他、セージの代わりにローズマリー、タイム、オレガノ、セボリーなど
   お好みのハーブを。

 ・上質のオリーブオイルと塩、こしょう

(・オプションで、さいの目切りのトマト。)

 

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クランベリー・ビーンズ


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ココ・ビアンコ・ビーンズ(調理後の仕上がりの色味を考慮したい場合、一番お勧めの品種)


【 作り方 】

 1)生のシェリング・ビーンズをさやから出す。
     (乾燥豆を使う場合は、一晩水に潰けておく)

 2)さいの目切りにした玉ねぎをオリーブ・オイルで炒め、次にさいの目切りの
   にんじんを加えてよく炒める。(にんにくを入れたい場合は、ここで炒める)

 3)鍋にシェリング・ビーンズと水をひたひたに加え、ハーブ、塩も加えて火にかける。
  (乾燥豆を使う場合は、水位をもう少し高く。又、塩は最後に入れる。)

  沸騰したら弱火にし、あくをすくいながら煮込む。
   水が減ってきたら時々足して、豆が常にひたひたの水に浸って煮込まれるように
   気を配る。

 4)フレッシュ・ビーンズは20~30 分をめどに、(乾燥豆は2時間ほどをめどに)
   豆が柔らかくなったら火を止め、塩加減を調節する。

   クランベリー・ビーンズなどは、煮込んでいくと色味が渋くなるので
   さいの目切りにしたトマトを最後の辺りに加えて一緒に軽く煮込むと
   ディッシュの仕上がりの色味も良くなる。



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* * *  * *



【 こぼれ話 】

DSC_0330-073113.jpg"La Tercera' ファームのAnnabelle さんによると、
このシェリング・ビーンズの栽培は、
とても手がかかるものだそう。

もっと市場に出していきたいが、
スーパーなどに卸してリーズナブルに
販売されることがその解決策ではない
と考えておられるようでした。

手をかけて育てられた素材の、
決して長くはない旬ーーー

その意味を知ってありがたく頂くことを
忘れないでいたいと思います。

又、そういう「旬」のものの希少価値を理解する人が増えることが、こういう貴重なファーマーたちを支えていくことになるのかもしれません。

La Tercera Farm ホームページ

 

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最近、NHKのテレビ番組で、アリスさんの「美味しい革命」が話題となっていますね。

これに合わせ、アリスさん関連の本も数冊日本語訳となって出ております。

"THE ART OF SIMPLE FOOD" (「アートオブシンプルフード」/ 邦題)は、このシェリング・ビーンズの作り方を教えてくれたケルシーさん(写真右上)が制作に大きく関わったご本でもあります。 
日本語訳本では、91頁から、お豆のことが記載されています。

今回ご紹介した、シェリング・ビーンズの種類や特徴、楽しいレシピも紹介されていて、
食材や作り方を読んでいるだけで食べ物への愛おしさが増し、お料理したい気持ちがむくむくと湧いてくる
一冊です。

プロフィール

加藤万里 -Mari-Kato-

フラワーデザイナー

加藤万里 -Mari-Kato-

カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。

フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。

また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。

ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。

著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。