- vol.51 いつの時も植物の声を聞いて
- vol.50 我が家の「緑の薬箱」
- vol.49 「コミュニティー・ハーバリスト」の生き方。
- vol.48 Homemade ウスターソース
- vol.47 リード・ディフューザーで爽やか芳香。
- vol.46 ドライハーブの作り方。
- vol.45 5月を楽しむ May Flower basket。
- vol.44 早春向けのバスタイム・メニュー
- vol.43 クリスマスのポマンダー作り
- vol.42 秋のパンプキン・ポタージュスープ
- vol.41 ハーブを使ったアイ・スパ/目の疲れに
- vol.40 フレッシュ・ビーンズで簡単手料理
- vol.39 夏用ジェルを手作り。
- vol.38 オールド ・ローズショー
- vol.37 コンパニオン・プランティング
- vol.36 (2)ハンガリアン・ウォーターとクリーム
- vol.36 (1)ハンガリアン・ウォーターとクリーム
- vol.35 クリスマス・スパイスに包まれて
- vol.34 自然の手当て/湿布
- vol.33 バークレーのリサイクル/リユース・ライフ
- vol.32 コンフリーで作る有機肥料
- vol.31 夏野菜でピクルス作り。
- vol.30 爽やかな口腔ケア(歯磨き粉、マウスウォッシュ)
- vol.29 エディブル・スクールヤード
- vol.28 苺づくし
- vol.27 マッチ箱と、ちいさなギフト。
- vol.26 手作りバームでリップケア。
- vol.25 クリスマス・ポプリ
- vol.24 想いをのせる、贈り物。
- vol.23 町のハーブ専門店
- vol.22 びわの葉を活用する。
- vol.21 夏用ボディパウダー
- vol.20 手作り虫除けスプレー
- vol.19 シードバンク(2)
- vol.19 シードバンク(1)
- vol.18 種のお話
- vol.17 植物で、喉を癒す(2)
- vol.17 植物で、喉を癒す(1)
- vol.16 Hand bath,Foot bath 手浴、足浴
- vol.15 冬に楽しむ Sprouting。
- vol.14 クリスマス/木への想い
- Vol.13 秋と、ほのかな灯りと。
- vol.12 ほんわりあったかフェルト
- vol.11 Herb Tinctures & Infused oil(2)
- vol.11 Herb Tinctures & Infused oil(1)
- vol.10 インスピレーションをもらうフラワーショップ
- vol.9 テーブルに、氷の演出。(2)
- vol.9 テーブルに、氷の演出。(1)
- vol.8 うちの、夏ごはん。
- vol.7 気軽に作る、暑中見舞い(2)
- vol.7 気軽に作る、暑中見舞い(1)
- vol.6 快適な旅の支度
- vol.5 人と人をつなぐラヴェンダー(2)
- vol.5 人と人をつなぐラヴェンダー(1)
- vol.4 ナチュラル・クリーニングが心地いい。(3)
- vol.4 ナチュラル・クリーニングが心地いい。(2)
- vol.4 ナチュラル・クリーニングが心地いい。(1)
- vol.3 Rose water を手作りする。
- vol.2 バークレー・ファーマーズ マーケット
- vol.1 ナチュラル・テイストの 子供の誕生日パーティー
2013.05.21
vol.38 オールド ・ローズショー
毎年5月には、ここバークレーでも
あちこちでガーデン・ショーやオープン・ガーデン(私邸の庭をパブリックに公開)、
プラント・セール(苗の販売会)などが行われ、
ガーデニングや草花愛好家にとっては、
一年で一番わくわくとした忙しさに包まれる時です。
私がバークレーに越してきた2004年以降、
毎年恒例5月のイベントとして楽しみにしているのが、
バークレーの我が家から車で10分ほどの
El Cerito Communication center で行われる、
オールド・ローズのショーです。
ショーとは言っても、
育てたバラの豪華さ、完璧な美しさ、
そしてその栽培技術を競う品評会とは趣が異なり、
とても素朴でリラックスした雰囲気が漂っています。
それはまるで、
イギリスの田舎町で行われるローズショーのようなーーー
バラを愛好する人々が小さなバラのお祭りのために町中から集まってきて、
その旬の美しさを愛でてお祝いするーーー
そのようなのどかさがあり、私はこの雰囲気が大好きで、
毎年5月の母の日の翌週日曜に開催されるこのイベントに、
可能な限り足を運びます。
この地域の個人の庭から摘んできたバラや、
ナーセリー(種苗店)の協力を得て揃えられたバラたちは
会場に所狭しと並べられ、その自然体な美しさが、
人々の目と鼻を楽しませてくれます。
このイベントを主宰している
"The Heritage Roses Group" のメンバーの話によると、
他国のバラのショーでは、
バラに触ることへの規制を設けられていることが多々あるそうですが、
こちらのイベントでは触って香りをかいで、
バラを思う存分楽しむことを推奨しているのだそうです。
それが、会場に漂っているリラックスした雰囲気の理由なのかもしれません。
このイベントのタイトル、"Celebration of Old Roses" に、
「ショー」という言葉がないのも、
「皆でオールド・ローズを愛で、楽しみましょう」という主旨が、
このイベントの元になっているからなのでしょう。
会場いっぱいに並べられたオールドローズたち。
ガリカ、センティフォリア、ダマスク、モス、アルバーーーなどなど、
オールド・ローズにはたくさんの種類があります。
このイベント会場には、バラの種類ごとに表示がなされ、
瓶に挿したバラたちが展示されています。
ひとつひとつのバラにも、名前がしっかり記載されていて、
興味のあるバラや好きになったバラ、
珍しいバラをメモする人の姿も見られます。
オールド・ローズとは、
原種バラや自然交雑によってできた亜原種(これをオールド・ローズの分類に入れない場合もある)、
古代に勾配されたと考えられる栽培原種を含めたもので、
日本で言えばイノバラのように一重でシンプルな野性的なバラ、
そして中世の絵などによく登場する、キャベツのような幾重にも重なった
ぽってりとした花びらのバラなどに代表されるものがあります。
定義としては、
1867年作のハイブリッド・ティーローズ「ラ・フランセ」以前の
バラのことを言うのだそうです。
日本でも、90年代辺りから
オールド・ローズが見直され愛好されるようになりましたが、
それまでは、ブリーディングされた四季咲きの大輪種、
色も豊富な現代バラ(モダン・ローズ)が主流だったと思います。
このイベントの創立者、Miriam Wilkins は、
それまでの現代バラ主流の流れに淋しさを感じ、
愛好していたオールド・ローズをもっと愛でたい
との思いから、
1975年に"The Heritage Roses Group "を創立し、
翌年76年にこのオールド・ローズのショーを
スタートさせたのだそうです。
70年代当時は、雑誌にも本にも、
新しい現代バラの話題ばかりで、
ナーセリー、パブリック・ガーデン、
バラを育てている Grower(生産者)たちでさえも、
流行の現代バラにしか、興味がなかったと言います。
現代バラは大輪で四季咲きという安定した特徴があるのに対し、
オールド・ローズは一部をのぞいてその殆どが
年に一度しか花を咲かせず、
花も小型であったり茎に棘をたくさん持つ種類があったりと、
確かに観賞、飾る側、育てる側にも、売る側にとっても
不都合で不便な点が多々あったせいなのでしょうか、
長い間、置き去りにされていました。
何よりもMiriam は、
オールド・ローズのみが持ちうる
素晴らしい芳香に思い焦がれ、
ある日、アメリカン・ローズ・ソサイエティの雑誌に
小さな広告を出すことにします。
「古いバラたちを愛している人は、入手しにくいオールド・ローズなど、
情熱をシェアするために、 Miriam Wilkins まで手紙を送って下さい。」
それからオールド・ローズの良さが
じわじわと世に広まっていくことになりますが、
第二次世界大戦終了時には、
この古い種類のバラを販売しているナーセリーは、
世界でたったひとつしかなかったのだと言いますから、
その頃の状況からすると、今オールド・ローズが人々に愛好され、
需要されるようになったのも、
Miriam の熱い思いが成した
功績のお陰と言えるのかもしれません。
"The Heritage Roses Group" にて、
彼女は年に4回、ニューズレター(季刊誌)を出していたそうですが、
これもその後海外の人々にも読まれることとなり、
フランス、イギリス、オーストラリアにも、
こういった古いローズを愛好するグループができていき、
その後、インターナショナルの Heritage rose のカンファレンス(集まり)も
開催されるような大きな流れになっていきました。
現代バラに対し、
オールド・ローズは花姿もこぶりで表情豊か、
ロマンティックな容姿を持つものもありますが、
何か人工的ではない、
原種の血を引き継ぐ素朴で原始的な魅力を持つものもあります。
そして何より、
オールド・ローズの持つ馥郁たる芳香の素晴らしさは
筆舌に尽くせません。
この世の中に、見るだけでなはく、
香りを楽しむという醍醐味があることを思い出させてくれ、
それを満喫する至福を味わえるのが、
オールド・ローズの大きな特徴と言えるでしょう。
この古いバラたちの香りをかぐだけで、
年に一度だけの、
この開花時期の貴重さを思います。
人生における素晴らしいものとは、
一年中それを味わうことができないからこそ、
その輝きの本当の意味を知るーーー。
それを、オールド・ローズたちによって
私は毎年確認しているのかもしれません。
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* Photo Gallery
会場のバラたちは、イベントの最後に販売される。
この花の枝を挿している瓶は、以前からこのイベントで使用してきたMiriam の持ち物で、
今は遺品となったこの瓶たちは、今も毎年このイベントで使用されている。
昔のピクルスの瓶などもあり、今見るととても新鮮で素敵。
左/日本の「ミニチュア クライミングローズの"Nozomi" を発見。楚々とした美しさ。
右/一重のバラは、バラの原種、ワイルドローズの素朴さと力強さをたたえて。
会場には、"Unknown"のコーナーも。
自分の庭に咲く名前の分からないバラを会場に展示し、心当たりのある観客は、その名前のバラを、
もしくは推定される名前をそばの紙に記しておくシステム。
左/オークション用の作品のひとつ、バラのアレンジ。
右/ドーネーション(寄付)のコーナーの素朴なバラの飾り。
会場外には、オールド・ローズのある庭に似合いそうな自然風の草花、ハーブが販売され、賑わいを見せている。
毎回このイベントに出店している、センテッド・ゼラニウム(においゼラニウム)のお店。
ローズやミント、チョコレート、ナツメグなどの香りを持つこのハーブには、コレクターもいるほど。
"The Heritage Roses Group"の創設者。
2009年11月、
91歳の生涯を閉じる。
小学校の教師をしていたMiriamの自宅の庭には、
何百種類ものバラが咲いており、沢山の人々が、彼女の庭を訪れたのだという。
彼女のバラ(特にオールド・ローズ)に対する愛情と情熱は、
BBCの映画、本、色々な記事となって伝えられた。
* The Heritage Roses Group/アメリカ
22 Gypsy Lane,Camarillo,CA 93010-1320
For questions about Heritage Roses Group
please email us at info@theheritagerosesgroup.org
For questions about the website
please email us at webmaster@theheritagerosesgroup.org
*Heritage Rose Group Bay Area(サンフランシスコ、ベイエリア)
Heritage Roses Group,
San Francisco Bay Area (BA)
Mailing Address:
818 Adams Street
Albany, CA 94706
Phone: (510) 527-3815
Email: kmosborn@earthlink.net
世界で一番最初にできた
Heritage Rose のOrganization(組織)は、
この"Heritage Roses Group"(1975年設立) の
グループと言われている。
このグループの設立目的は、メンバーを集めて
公的にオールド・ローズを人々に紹介していくため。
年に4回、25年間ニューズレターを作成したMiriam の
亡き後は、グループがこれを引き継いで発行している。
"Celebration of Old Roses" のイベントは、
毎年5月、母の日の翌週の日曜日に開催。
フラワーデザイナー
加藤万里 -Mari-Kato-
カリフォルニア・バークレー在住、フラワーデザイナー。ハーバリスト。
1994年より、ロスアンジェルスで花教室FOLIAGEを主宰。
2004年秋より処点をバークレーに移し、06年、あらたに「お花会」という形でFOLIAGEを再開。その後、アロマクラス、ハーブクラスも増設。
フラワーアレンジ、アロマ、メディカルハーブ、ガーデニング、インテリア、手仕事など多方面から、花のある暮らしを提案すると共に、植物を通して、目に見えない大事なことを思い出していくための機会と場になることを願い、会を開催している。
また、昔ながらの暮しの知恵を取り入れ、現代風に楽しむことで、忙しい日々を送る現代人が忘れていることを取り戻していきたいと考え、スローライフを自ら実践し、提案している。
ロスアンジェルスの日本語情報誌「LIGHT HOUSE」にて、98年から02年まで「カリフォルニア花日記」「シンプルエコライフのすすめ」などの記事を連載。
09年春と秋にバークレーで、食とお花、食と手仕事をコラボさせたワークショップ付きの「カフェ・イベント」を開催。好評を博する。
著書に、ロスでの花生活を綴ったエッセイ『ガーデンダイアリー カリフォルニア 花と暮らす12か月』(講談社文庫 98年刊)がある。